インドのガルワールはヒマラヤの探検、登山の黎明期から注目され歩かれてきた地域です。人類が初めて登った7000メートル峰はガルワールのトリスル(7120m)で今からちょうど100年前の1907年のことでした。登頂した有名な探険登山家ロングスタッフはガルワールを「全アジアの高地の中で最も美しい地域」と言い、「山と谷、森林と草地、鳥と動物、蝶と花、すべてがうまくむすびついている」と表現しています。
このガルワール・ヒマラヤの最高峰がナンダ・デビ(7816m)です。この山はその美しさゆえに古くから注目され、多くの登山家がやってきました。幾多の挑戦を退けてきたアプローチのガンジス川源流のひとつであるリシ・ガンガの大峡谷を突破してナンダ・デビの内院とよばれる山懐にいたるシプトンとティルマンの探検記は、学生時代わくわくしながら読んだものです。内院は天国のように美しい場所だといいます。1936年ティルマン等によって初登頂がなされましたが、当時登頂された山の最高峰でした。
地元の村ではナンダ・デビはヒンズー教の女神パールバティ(シバ神の妻)としてあがめられています。モンスーン真っ只中、やはりナンダ・デビはなかなか姿を現してくれませんでした。麓のジョシマートで何日も待った末にやっと出会えた女神様はたとえようも無い美しさでした。
2007年 毛利立夫